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数時間後、やはり天候は回復せず、空は相変わらずどんよりと曇っていた。だけどそれをまるで気にしていないかのような子供たちの笑い声とはしゃいだ声が響き渡った。
場所は女の子の通う小学校、その体育館で。
「すごーい!天井に星が映ってる!」
「きれー!」
体育館の天井に映し出されているのは、本来雲の上にあるはずの今日の夜空。さらに空気が綺麗で周りが暗くなければ見えないような細かい星まで見えるようになるオプション付き。
うん、控えめにいっても絶景ではないだろうか。小学生たちは床に敷かれたブルーシートに寝転がりながら天井を見つめ、その近くでマイクを持った男性が丁寧で分かりやすい星の説明をしている。女の子も嬉しそうだ。
帽子をみて俺が思い付いたこと、それは体育館の天井に星空を映し出すことだった。数時間前、女の子と共に体育館に来た俺は一度女の子を体育館の外に出した上で流れ星を取り出した。流石に流星省の娘さんに流れ星を使うところを見せるのはまずいからだ。
「よし…」
息を吸って、流れ星に願う。
「体育館の天井に、星が映し出されますように。体育館の天井に、星が映し出されますように。体育館の天井に、星が映し出されますように!!」
その瞬間流れ星は輝きを増し、俺の願いを叶えた。見事、ただの体育館の天井を美しい星空に変えてくれたのだ。
「お兄ちゃん、ありがとう!これどうやったの!?」
興奮気味に女の子に尋ねられるが、そこは曖昧に笑うしかない。しかし、あまりにも尋ねられるので、秘密を話すように密やかな声で教えてあげた。
願いを叶えて輝きを失った、今やただの石となったそれを握って。
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