3058年7月7日

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薄汚い本だが、ホシの目が一気に輝いた。 間違いなくその手に握られているのは、過去について綴られた文献だった。 「本だ!!」 「よく飽きないな、そんな過去の文献ばっかり探して読んでの繰り返しで」 「僕は空っぽだからさ……」 大切な物の様にその本を抱きしめ、喜びの溜め息を漏らす。 空っぽの自分を埋めたくて、何より人間を知りたくて。 ホシは、本のページをめくる。 「七夕……?」 綴られていたのは、1000年前に存在していたとされる“日本”の風習についてだった。 元来他の国から伝わった風習で、夜空に住む織姫と彦星が天の川を渡って再会する唯一の日。 人々は短冊に自身の願いを乗せ、笹に飾るのだという。 「そんなものがあったんだ……」 「何と書いてあるんだ?」 「七夕って風習。自分の願いを、飾る日?らしいけど」 「願掛け、だったか。それに近いのだな」 「後は、空に天の川がかかる日でもあるらしい」 「空に川?」 ホシに言われ、スカイも空を見上げる。 だがそこに広がるのは、欠けた月と流れる星々と空いっぱいに広がる星空しか無く、どれがその川にあたるものなのか判らなかった。 「その月が落ちた日に、織姫と彦星もどっか行っちゃったんじゃないか?」 「僕は、見えないだけでいると思うな」 本を閉じて、ホシは鞄を更に(さぐ)りだす。 取り出したのは、小さな紙とペン。 これもまた、文献を探していた時に見つけた物だった。 その紙に何かを書き綴り、それを空に掲げる。
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