5人が本棚に入れています
本棚に追加
薄汚い本だが、ホシの目が一気に輝いた。
間違いなくその手に握られているのは、過去について綴られた文献だった。
「本だ!!」
「よく飽きないな、そんな過去の文献ばっかり探して読んでの繰り返しで」
「僕は空っぽだからさ……」
大切な物の様にその本を抱きしめ、喜びの溜め息を漏らす。
空っぽの自分を埋めたくて、何より人間を知りたくて。
ホシは、本のページをめくる。
「七夕……?」
綴られていたのは、1000年前に存在していたとされる“日本”の風習についてだった。
元来他の国から伝わった風習で、夜空に住む織姫と彦星が天の川を渡って再会する唯一の日。
人々は短冊に自身の願いを乗せ、笹に飾るのだという。
「そんなものがあったんだ……」
「何と書いてあるんだ?」
「七夕って風習。自分の願いを、飾る日?らしいけど」
「願掛け、だったか。それに近いのだな」
「後は、空に天の川がかかる日でもあるらしい」
「空に川?」
ホシに言われ、スカイも空を見上げる。
だがそこに広がるのは、欠けた月と流れる星々と空いっぱいに広がる星空しか無く、どれがその川にあたるものなのか判らなかった。
「その月が落ちた日に、織姫と彦星もどっか行っちゃったんじゃないか?」
「僕は、見えないだけでいると思うな」
本を閉じて、ホシは鞄を更に探りだす。
取り出したのは、小さな紙とペン。
これもまた、文献を探していた時に見つけた物だった。
その紙に何かを書き綴り、それを空に掲げる。
最初のコメントを投稿しよう!