親父と呑む。

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「……親父、」 「なんだ?」 「……あの時は、ごめん」 「……今さらだろう。だから」と、親父が目尻に微かに滲んだ涙を節くれた指でぐいと横に拭った。 「いずれおまえの娘のみさとちゃんも、父親の思いっていうのをわかる時が来るだろうから」 「……ああ」と、頷く。 「俺も、昔は父親にたてついて、『大嫌いだ!』と言ったことがあったからな……」 「……親父も、爺ちゃんに言ったことがあったのか」 空になった徳利のお代わりを頼んで口にする。 「ああ、父親っていうのは、大概因果なものだな…」 「……因果か。確かに母親に比べると、距離も取られやすいからな。子供のことを心配しているのは同じなのに……いや、距離がある分だけ余計に心配しているところもあるのにな…」 俺の話に親父は酒を一口含むと、 「おまえも、親父になったんだな」 と、いつの間に皺の増えた顔に、薄っすらと笑みを浮かべた。 「親父になったって、なんだよ…」 「ちゃんと父親になったのかってことだ。いつまでも子供だと思っていたのに」 「そうかよ…」と軽く笑って返して、二本目の徳利から親父のお猪口に酒を注ぎ足した。 「こうやって男同士で呑むのも、悪くないな」 「男同士じゃない、親父同士だ」 親父の言葉に、はは…と声を上げて笑い、 「じゃあ親父同士、乾杯をしようか」 お猪口をカツンと突き合わせると、 いつか……こんな風に俺も娘と呑む日が来るだろうかと、親父と酒を酌み交わしながらしみじみと感じていた……。 終
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