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「すっごいっね!」
よく晴れた帰り道、ぼくは嬉しくなって彼女に話しかけながら歩いて行った。
「ちかっらを、みっるのっは、はっじめてだったけっど、こんなっに、すごいっだなんって、おもっわなかった」
「ありがとう」
ぼくの言葉に彼女は少し困ったように返事をした。
「こんなっに、はれってさ、みんっなよろこんっでるよ」
「ええ」
彼女の暗い様子に、ぼくは思わず歩みを止めた。
「ねえっ、どおっしたっの?」
ぼくの問いに前を歩いていた彼女がゆっくりと振り返った。
「あの神があなたに取りついてしまったようなの」
「ぼくっに!?」
その言葉にぼくは驚きの声を上げた。あの口に入った白いもやもやが、やはりそうなのだろうか。
「あれは甘噛み。甘噛みを起こす神よ」
彼女はそういうと、小さくため息をつくきひとり歩いて行った。
甘噛みを起こす?
その言葉にぼくはひとり首をかしげるばかりだった。
そのあとも、ぼくの甘噛みは続いた。今彼女が懸命にこいつをぼくから引き離す方法を探している。
時折噛んでしまう口内炎が痛い。
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