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「あーー」
開かれた扉の中から、不思議な声がした。
ぼくは、彼女の少し後ろの木の陰からこの様子を見ていた。彼女が立っていて、祠の中の様子は見ることができなかったが、それでも彼女のものではない、男の、少し高めの男の声が聞こえた。
あれが、アマガミサマなのだろうか。
「アマガミサマ、村人たちが困っております」
彼女は再び祠の前に跪くと、そうアマガミサマに話しかけた。
「もう1か月も雨が降りやまぬのです。このままでは、村の作物は腐りはて、生きることもままなりません」
「うん、それっは、っわかってっるんっだっけっどね」
ぼくはそのアマガミサマの声に驚いた。不自然なほどたどたどしかった。
「アマガミサマ、どうか雨を降りやませていただくことはできませぬか」
彼女の凛とした声が、森のなかに響く。
「いやっ、ぼくもっね、そうしってあげたいっのは、やまっやまっなんだっけっどね」
祠の中の声は相変わらずたどたどしいく答えた。
彼女はそれに少し疑問を抱いているのか、言葉を詰まらせた。しかし、気を取り直したのか、
「アマガミサマ、なぜわれらの願いを叶えてはくださらないのですか」
とアマガミサマに問いかけた。
「ぼっくにもね、どうして、あっめがやまっないのか、ぜんっぜんね、わかんないんっだよ」
アマガミサマのその声に、彼女は地面にへなへなとしゃがみこんでしまった。アマガミサマでも、この雨を止めることはできないのか。
「なんっだかね、さいっきん、からっだがおかっしくってさ。どおっしちゃったんだか、じっぶんでもわからないっんだ」
「アマガミアマ」
彼女はその言葉に何かを察したのか、今度はゆっくりと立ち上がった。
そして、確信をつく質問をした。
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