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流星群
それは金曜日の、いつもと大して変わらない、晴れた日の夜だった。
「兄貴! 兄貴見た!?」
興奮した様子の妹が、ノックもせずにぼくの部屋に入って来た。
「どうした」
「空見て空! 凄い事になってるよ!」そう言いながら、妹は勝手にカーテンと窓を開けた。「ほら!!」
言われるがままに暗い空を見上げた直後、何かがキラリと輝いたかと思うと、あっという間に左下の方へと落ちて行った。
「流れ星……?」
「凄くない? こんなに沢山!」
「え?」
妹の言う通り、流れ星は一つや二つどころではなかった。空のあちらこちらで次から次へと、一瞬の輝きを見せては落ちてゆく。
「流星群だよ! 凄い!」
「……待て、そんなニュースあったか?」
「そんなのいいじゃん! むしろサプライズ感あるし!」
階下から両親の興奮したような声が聞こえてくる。近所の住人も次々に窓を開け、感嘆の声を上げたり空を指差している。
ぼくは何故か喜べなかった。むしろ時間が経ち、流星の数が増えるにつれ、どんどん不安が増してゆく。
「なあ、いくら何でもおかしくないか」
「何でよ」
「専門家でも素人でも、誰かこれを予測していた人間はいたか? ……ほら、ずっと遠くの空が赤くないか。まるで燃えているみたいに。気味が悪い」
「はあ? ……ったく、これだから兄貴は」
気味が悪いのはお前だと言わんばかりの呆れ顔でぼくを見やると、妹は自分の部屋に戻っていった。
ぼくの不安は的中した。
あれは流星群なんかじゃなく、地球侵略を企んだ異星人によるレーザー攻撃だったのだ。
突然の攻撃により、数時間後には、ぼくが暮らす街だけでなく日本中が──いや、それどころか世界中が、人類滅亡の危機に晒されてしまった。
あの日から約一箇月が経過し、家族で生き残っているのはぼく一人となった。
しかしまさか、こんなSF的な大惨事が実際に起こってしまうなんて。
ぼくに異星人に対抗出来るだけの不思議な力が宿るとか、せめて見知らぬ誰かさんたちがそうなって、今のこの状況をひっくり返してくれりゃあいいんだけど……まあ、現実そんなに甘かないよな。
逆三角頭に無数の目玉の付いた異星人に銃を突き付けられながら、ぼくはそう自嘲した。
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