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スタート
あれから打ち合わせを繰り返すこと数週間。
ついにプロジェクト用の広告デザインが完成した。
あの電話の後、私は仕事に対してとても前向きな気持ちになれた。
すると、ニキビの数もみるみる減っていった。
素くんともお互いの意見を率直に言い合いながら、最高のものを作り上げることができた。
そして、今日は彼の海外進出プロジェクトのお披露目会。
私も招かれたために、彼に恥じぬよう華やかな格好をして会場へ向かう。
「直!」
「素くん!」
着こなすのが難しそうな菫色のスーツを着て駆け寄って来てくれた彼は、とても安心したような顔をしていた。
「最近、キレイになった?」
会って早々、穏やかに照れるような問いかけをする彼に胸が高鳴る。
やっぱり彼は私のことをよく見てくれている。
それがとても嬉しかった。
さらに、あぁ、私はこの人が好きなんだなぁと実感した。
彼の言葉で、不安なことが減って比例するようにニキビが消えたのも事実。
だけど、彼に心配かけるまいと規則正しい生活やスキンケアも今まで以上に頑張ったのだ。
それがきちんと結果に表れて、気づいてもらえたのも幸せだった。
私は彼にたくさん助けられたから、それがちゃんと伝わるように、自分が思う最高の笑顔を浮かべて素直な言葉を口にしようと決めた。
「素くんのおかげだよ。ニキビ消えたの。」
すると彼は、再会した時と同じように、にかっと笑った。
でも、今回はそれだけじゃなく、私の頭の上に手を乗せて目線を合わせた。
「このプロジェクトに、直が関わってくれて本当に良かった。夢への第一歩を直と一緒に踏み出せてすごい幸せ。」
再会当初同様、彼の言動についていけない私をよそに、彼の言葉は続く。
「それで、このプロジェクトが上手くいったら言おうと思っていたんだけど、やっぱり今言いたいから言うね。」
そう言って彼は、小さな箱から何かを取り出した。
「直、僕と付き合ってください。小学生の時から好きで、会えなくてもその気持ちはずっと変わらなかった。ニキビのことも、ずっと好きだったからこそ気にしていたんだ。素直に言えなかったから、からかうような言い方しかできなかったけど…。」
そして彼の手が私の首に触れたと思うと、そこには菫色のネックレスが輝きを放っていた。
「誠実で、責任感が強い直に、僕の素直な気持ちですって意味を込めて。この菫色のちょっと派手なスーツも、素直に言えますようにって今日のために作ったんだ。いわゆる勝負服。」
真剣な眼差しに見つめられ、頬が恐ろしいほどに熱くなっている。
これはやばいと思いつつ、私も返事をしなければと、思い切り息を吸ってから答える。
「ありがとう。とても嬉しい。私も大好きです。よろしくお願いします。」
私たちは手を繋ぎ、会場のホールへと向かった。
自分の気持ちに嘘はつかないと強く誓って。
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