忘れていたもの

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翌朝…… お城から、大事そうな箱を持った役人が訪れて、 「王子様からの命令である」 と、姉と妹に、ある事を試させた。 「駄目だ。まったく合わない。もう一人の女の子を出したまえ」 すると母親は、 「シソテレラですか。あの子は関係ないでしょう」 「いや、命令だから全員に試す」 仕方なく母親は、シソテレラを呼んだ。 彼女の前に出されたのは、実に美しいガラスの靴だった。 役人はシソテレラを見て、 「お前なら、なんとか合いそうだな……。はいてみなさい」 シンデレラは、ドキドキしながらガラスの靴を持つと、 (やっと幸せが訪れたんだわ! 私が、はけるに決まってるんだから) 余裕で足を入れた。 すると…… 「えっ、なんで? なんで、どうして、なんで?」 さらに焦るため、思うように足が動かない。 「いやいや、残念(おし)いな……。しかし、このガラスの靴に、あんたの足は合ってないようだ」 溜め息をついて役人は言った。 それでも諦め切れない彼女は、爪先を丸めてみたり、角度を変えてみたり、と悪戦苦闘する。 ……が、どうしても足踵(かかと)までスルッとは入らないのだ。 「な、なんで……?」 それでも、無理やり足を突っ込もうとしている彼女に、役人は、実に不快(ふかい)そうな顔で、ガラスの靴を取り上げてしまった。 (ああ……どうして……??) 彼女は、絶望で目の前が真っ暗になった。
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