忘れていたもの

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そう、入らないはずがないのだ。 そのガラスの靴は、昨夜、シソテレラ自身が、はいていたものなのだから。 それは、まるで夢のようなパーティーだった。 昨夜、義母が寝ている間に、お城でのパーティーに参加し、王子様とダンスした。 王子様は、ずっとシソテレラと踊っていた。 多分、気に入ったのだろう。 そして、十二時の(かね)が鳴り出した時、ガラスの靴を残して、行方不明になった彼女に再会したいと想った。 だから、こうして役人を使い、あの時、姿を消した彼女を探しているのだ。 (なのに、どうして靴が合わないの……?) 役人は、ガラスの靴を箱に仕舞うと、 「仕方ない。他をあたろう……。邪魔したな」 S家から行こうとした。 「ああ、待ってください。本当に私なんです。もう一度、そのガラスの靴をはかせてください。 いえ、王子様に会わせてください。そうすれば、きっと私だと、一目でお分かりになると思います」 すがりつくように訴えたが、役人は、もはやシンデレラの事など一瞥(いちべつ)もせず、立ち去って行った。 「おやめ! バカなことは」 義母は、シンデレラの肩を掴んで止めた。 その時、次の家屋に向かう役人の箱から……パリン! という音がした。
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