忘れていたもの

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「そんな……そんな……どうして……?」 絶望と共に納屋に駆け込んだシソテレラは、ボロ布団に倒れ込み、 「どうして……。やっと幸せを手に入れられると思ったのに……。 あの靴が合わないなんて……」 その様子を心配そうに見ていた、一匹のネズミ――魔女のルイーズが、 『いいかいシソテレラ』 ボワン! とネズミが大きくなり、魔法使いが現れた。 『どうしても手に入れたいものは、ちゃんと自分で考えて努力しなきゃ。 そしてチャンスだと思ったら、確実に捕まえるのさ。 誰かが助けてくれるなんて思ってたら、そうやって取り逃がしちまうんだよ』 「はい……。でも、どうして靴が合わなくなったんですか?」 『あんたがチャンスを逃しちまったからさ。 別の言い方をすれば、靴があんたを捨てたのさ』 「……」 『だから、さっきの役人が出て行った時、パリンて聞こえたろう? あのガラスの靴が割れた音だったんだよ。 多分、次の娘の家で出したら、ガラスの靴はコナゴナになってるだろう』 「私……バカでした」 『ま、あのガラスの靴に、ちゃんと言い含めなかった私の責任もある。 だから、もう一回だけ助けてやるよ。 だから、しっかり自分の努力で掴み取るんだ。いいねシソテレラ』 そう言うと、魔女のルイーズは、魔法の杖を持った手を振り上げた。
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