蝉の声

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蝉の声

 蝉の声が聞こえた。  その声はまだ誰とも重なってはいない。  たった一匹で鳴いている。  自分だけ早く目覚めてしまったのだろうか。  何が見えただろう。何を思っただろう。  ひとりの寂しさと誰かを待つ楽しさ。  確かなことは、そこにあるのは最初に起きた者にしか見えない特別な世界だということ。
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