9人が本棚に入れています
本棚に追加
パルコ
イカ・コンピューターこと「イカコン」の研究を始めて、半年が経った。
ある日、水槽の前でふたりきりの時に、パルコはつぶやいた。
「私、誰かに尾行されているかも」
ベンタが事実を突き止めようとしたが、相手は気配すら感じさせない。
「イカを捕まえるよりも、難しいや」
探偵かスパイか……、どうやら尾行はプロの仕業らしかった。
その頃すでに、彼女はイカコンへのアクセス手段を確立していた。
のぞみどおりの演算を実施させることに成功したのだ。
イカにはもともと、人間の幼児並みの知能があると言われている。
16匹のイカコンは大型コンピューターを何台か繋いだほどの性能があった。
もしかすると、スパコンを超える性能を持つかもしれない。
独自で超大型コンピューターを開発する技術力のない企業や、
安価で豊富にとれるイカという素材に魅力を感じた某国が、
パルコ博士の研究成果を狙っている、との噂もあった。
ベンタはオオホタルイカの水槽に餌を投げ入れて、語り掛ける。
「お前ら、あまり優秀すぎるのも困り物だぜ」
彼の悩みを知ってか、知らずか。
ツー・ツー・ツー ツー・ト・ツー
ベンジがゆらゆら揺れる2本の触腕の先を明滅させた。
最初のコメントを投稿しよう!