水神様と鎮魂の私雨

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たまたま、ニュースを見ただけ。 でなければ、こんなところに帰って来たりはしない。 こんな、田舎臭くて、妹を見殺しにした村なんか。 無人駅から眺める山には、昔と変わらない。 他の山より少し小さく、山の周辺をぐるりと囲むように、川が流れている。 その山だけに、雨が降り注いでいた。 子供の頃、よく遊びに行っては、親や村の人間に、口酸っぱく言われた事がある。 『あの山の頂上には行ってはいけない。』 『水神様の社がある。近づいてはいけない。』 『水神様は、村の守り神。何百年前からあの山に住んでいる。だが、水神様に供物を捧げる事が無くなった。』 『何年も、あの山は腹をすかせている。だから、山に入れば供物だと思い込まれて……。』 『食べられてしまうよ。』 ただの迷信だと思っていた。 子供を危ない場所から遠ざけようと、大人達が考えたお伽噺のようなものなのだと。 しかし、違った。
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