会いたい

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会いたい

 王都へと帰る前の晩。ドニはシリルとたくさん話をした。  そのときにシリルが第三王子だということを聞いた。 「隠していてすまなかった」 「うんん。話してくれてありがとう」  王族は美しいプラチナの毛並みをもっていて、恥ずかしくて名乗れなかったのだという。  王都にはいい思い出はないらしく、ドニと出会ってからの暮らしはとても楽しいものだったと言っていた。  ドニだって同じだ。憧れだった獣人と仲良くしてもらえたことは嬉しい出来事だ。  これからもこの関係が続いて欲しい。シリルは可愛いしファブリスは頼りになる。  ただ残念なのはゾフィードとは、友達になるには時間が足りなかったようだ。 「ドニ、たくさん話をしよう」 「うん。寝たら起こすからね」 「あぁ」  ぎゅっと手を握りしめてふたりの話しは遅くまで続く。  ただ、ふたりそろって眠たさには勝てなかった。いつの間にか眠りに落ちていて、ファブリスが起こしに来るまで目覚めなかった。  朝、ロシェとふたり馬車を見送る。  必ず帰ってくるからと別れを惜しみ、結局、友達とまでは仲良くなれなかったゾフィードに最後だからと撫でさせてもらおうと思ったら「触るな変態」と言われて、それが別れの挨拶となった。  ※※※  シリルが成人の儀で帰ってしまった間、ドニはぼんやりと過ごす日が多くなった。 「おい、薬草を取りに行かないのか?」  耳朶に輝くイヤリングがあるから、ロシェは寂しさを紛らわすことができるのだろう。  しかしドニには何もない。ただ待つのがこんなにつらいなんて思わなかった。 「会いたいな」  シリルに、後、もう一人の顔が浮かぶ。  可愛かった。耳の後ろを掻いたとき、顔を真っ赤にして震えていた。  喉の奥を鳴らして耳と尻尾を垂れさせる姿は、何度おもいだしても表情が緩む。 「そうだな」  イヤリングに触れ、そうロシェがつぶやく。 「素直じゃん」  ドニがからかうように言うと、顔をほんのり赤く染め、 「煩い。ほら、薬草を取りに行くぞ」  と顔をそむけてしまう。 「わかった。いま、用意するね」  ファブリスと出会い、恋をするようになってロシェは変わった。    頬を染める姿を見るようになろうとは思わなかったなと、口元を緩ませながら森に入る準備のため、獣が嫌がる草を焚く。
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