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「各務君。ごめん。先帰ってもらっていい?」
中学2年の秋。
一緒にクラスの文化祭実行委員になった私と各務君は、クラスの出し物の準備に必要なものを隣町まで自転車で買い出しに行った。
全て買い終わって帰る段になって、その日生理だった私は貧血で気分が悪くなってしまった。
ちょっと、その辺のベンチで休んで帰ろう……と思いながら言うと
「どうして。何か用事ある?」
と、各務君は言った。
その当時、私は今とほぼ変わらない身長で、各務君は私と同じか小さいくらいだったと思うけど、真面目でしっかりした人、反面、それが過ぎて融通が利かない人という印象だった。
「あ、ちょっと……気持ち悪くて、休んでから帰ろうと思って。だから、先帰ってくれていいよ」
嫌いではないけど好きでも仲良くもない男子と居るのは、気も遣うし疲れる。
正直早く一人になりたかったのだけど
「じゃあ、早く座った方がいいよ。確かこっちに公園が……」
商店街を逸れて彼は歩き出した。
いやいや、いいよ、そういうの。ほっといてくれたら何とかなるから。
内心そう思いつつ、後をついていくと、本当に一本裏に入っただけのところに小さな公園があって、私はベンチに座れて一息つくことができた。
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