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『これが、天宮のやり方なわけ?
そうでしょ、
私をおかしくさせるつもりなんでしょ』
心が潰れてしまいそうで、
思わずそう口にしたエリは、
まるで自分を見失いそうになるのを手放さないように、
揺れる視線で掌をマッサージしていた拓也を見据えた。
『エリ……、
今日は何が不満なんだ?』
『やめて!!!!』
エリは拓也の手を振り払うと、
肩で息をしながら、
微笑む拓也を睨みつけた。
心がモヤモヤする。
心臓がゆっくりと溶け出して、
周りの臓器達を飲み込んで全部が鉛になっているかのような、
息苦しく、重い不快感。
『天宮、あんたおかしいよ、どうかしてる、』
『エリ、』
『イカれてる、正気じゃない、』
『エリ、』
『私は、絶対におかしくなんかなったりしない、私は』
『……エリ、落ち着け、大丈夫だから』
『言われなくてもわかってる!!!』
金切り声で叫んで頭を抱えてしゃがみ込むエリ。
拓也は冷や汗を頬に伝わせた。
ブツブツと何かを口走るエリを見て、
目を細める。
将来を期待されていたエース、
精神的強さは他とは比べものにならない程に強靭で柔軟に鍛え上げられているが、
やはりまだ年端も行かない少女。
繰り返される受け入れ難い拓也の愛情と
自分の絶望的な状況に、
エリは負けてしまった。
エリが拓也に言い放った言葉は皮肉にも、
エリ自身に対する言葉であり、
エリは、自分を見失うほどに、心を壊してしまっていた。
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