君との距離

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爆音を轟かせて低く飛ぶ戦闘機。Yナンバーのトラックが行き交う58号線、ドル表示の中古車屋、フェンスの向こうはアメリカ。 ごちゃごちゃと入り組んだ路地の花ブロック塀の向こうにたわわに実ったパパイヤが見える。 午後5時だというのに刺すような日差しの中、親友の勇樹と自転車に乗って中部にある岬に向かう。 スポーツメーカーのブランドロゴが目立つリュックサックの中にはブルーシート、寝袋、水筒、タオル、虫よけスプレーまで入っている。準備OK。 「ペルセウス座流星群を見に行こう」と勇樹から誘って来た。 もちろん、勇樹からのそんな楽しそうな誘い俺が断る訳が無い。 二つ返事でOKして、この週末自転車に乗って光源の少ない岬に向かう。 天気予報は晴。 1時間ぐらい走り目的地到着。 「風が気持ちいいな」 勇樹が、うれしそうに笑う。 いつからだろう。 俺がその笑顔に切ない思いを持ち始めたのは… 「ああ、天気もいいし、今日はバッチリだな あ、そうだ。天体観測アプリをスマホに入れたんだ。空に向けるだけで星の場所も名前も表示される無料アプリなんだ。これで星座もバッチリだ」 「何それ、見せて」 勇樹が俺の持つスマホを覗き込む。 顔が近い! キスまで後5秒って、いうぐらいの距離。 おまけに自転車で走って来たから勇樹の汗の匂いまでする。 ドキドキしてきた。 俺は、邪な心をごまかすべくアプリについて語りだす。 「このアプリは、起動させてその方向を向けるだけでGPSが働いて星の名前を教えてくれるんだ」 「北斗七星も?」 「北斗の拳かよ!」 「じゃあ、M78は?」 「ウルトラの星かよ!」 勇樹が笑う。 俺も笑う。 俺たちは親友だ。 俺がこんな気持ちを持っていることを勇樹に知られたらもうこの笑顔は見られなくなる。 だから言わない。 だから言えない。
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