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思わずため息をつく。
このお方は……。
小さな頃から学業も武術も優れ、その美貌も手伝ってたくさんの美しいご令嬢から求婚されているというのに。
いちメイドの私ごときを好くなんて、坊ちゃんはもしや女の趣味がよろしくないのかしら。
小さな頃からずっと一緒にいたから、友好の感情を恋愛と勘違いしたんじゃ、と前に言った時のことは忘れもしない。
怒りの感情をあらわしたその顔を見るのは初めてで、とても怖かったのを覚えている。
怖すぎて若干涙目になったら、我に返ったように坊ちゃんは謝り倒したが。
この感情は勘違いなんかじゃない、と教えこまれても、やはり、どうしてもその方向に頭がいく。
私はたいして顔も良くない、ただのメイドなのに、どうしてこのお方は。
「坊ちゃん。そんな事を軽々しくいうと本当にご結婚出来なくなりますよ」
「いいもん、結婚できなくたって、ずっとユリスを養うから」
「また口調が崩れてます」
注意しても聞く耳を持たず、不機嫌顔の坊ちゃん。
はぁ……。
「坊ちゃん」
「なんだい」
「人の注意を聞かない人間は、嫌いですよ」
「…!?」
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