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『嫌い』というワードに大きく動揺したらしい坊ちゃんは、近づけていた顔をゆっくりと離した。
「ちゃんと、するから…きらいにならないで」
そんなことを口を尖らせて言うもんだから、とても可愛く見えて仕方なかった。
「最初からちゃんとして下されば、お嫌いになどなりませんよ」
「うん…」
項垂れている坊ちゃんの頭をぽんぽんと撫でると、勢いよく坊ちゃんはこちらを見た。
「〜〜っ、ユリス、お前もお前だぞ!」
「はい、なんでしょう?」
坊ちゃんの大声に驚きながら、手を引っこめる。
あら、頭撫でられるのお嫌いでしたっけ?いつの間に坊ちゃんは成長していらして…と勝手に感動していると、頭になにかの感触。
坊ちゃんの手のひらだった。
「俺も撫でるし」
なんて言いながらぶっきらぼうに私の頭をわしゃわしゃする坊ちゃん。
私がきちんと固めていた髪の毛が崩れていく。
それにしても…本当に成長なさいましたね。
数年前までは私よりも背が小さかったのが、今やすっかり見上げる大きさ。
なんだか誇らしくなりますね。
「坊ちゃん。髪が乱れてしまいます。そろそろ手を離して下さい」
「ユリスもさっき俺の髪撫でたじゃないか」
「髪が崩れるほどはしていません」
「してた」
最後に一気に私の髪をぐしゃぐしゃにした坊ちゃんは満足気にこちらを見下ろした。
「本当にもう…いつまでも子供っぽい方ですね」
あとでまた髪の毛を直しませんとね。
「坊ちゃんも髪を整えてください。今アーリたち(※坊ちゃんの身の回りの世話をするメイドや執事たち)を呼びますね」
「ユリスがしてくれないのか」
「ええ。私なんかより昔からやられている方たちの方が坊ちゃんも安心でしょう」
「えぇ…」
「坊ちゃん。口調」
「…うん」
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