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祖母宅は人でごった返していた。
田舎なのでお通夜もお葬式も全部、この屋敷で行う。
私は手伝いに来ている近所の人やあまり会った事のない年の離れた従兄弟達との対面に戸惑った。
邪魔になるから二階に行ってなさいと母に言われ、例の天井に穴の空いている二階へと上がる
二階へ上がる階段脇から台所を覗くと、父がしょうゆ豆の入った瓶を抱えて食べていた。
「食べるか?」
「ううん、いらん。」
私はそのまま二階へと上がった。
父はいつものごとく飄々としていた。
祖母の死を悲しむでもなく、なんというか…
良くも悪くもいつも通りだった。
祖母の遺言でお通夜は丸三日間行われた。
遠方からお別れに来てくれる人が慌てなくていいようにとのことらしい。
相変わらず、屋敷内はバタバタとしていた。
弔問客は昼夜を問わず絶えなかった。
祖父の偉業
祖母の人柄
あと
父の兄弟達の社会的立場から
とてつもなく規模の大きいお通夜となった。
父は兄弟の中で落ちこぼれだった。
父の兄や姉達がいつも言っていた。
出来の悪い弟だと。
だけど、
父は落ちこぼれてはいない。
少なくとも当時小6の私はそう思っていた。
ただ、自分の進みたい道に進んだだけ。決して、平坦ではないけれど、自分の意思を通しただけだ。
当時、大手ゼネコンの四国支店長をしていた父の義兄が、仕事が安定しない工務店の経営など止めて口を利いてやるからサラリーマンになれと、父に昔から言っていたらしい。
父は頑なにその話を断り続けていた。
父は生涯職人である事を選んだ。
まあ、その頑固な真っ直ぐさが結果、私達家族に度々迷惑を掛けることになるんだけど…
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