12月28日

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12月28日

お葬式当日、屋敷内は更に人で溢れかえっていた。 奥座敷に祭壇。 全ての襖を外し座敷を広げても全ての人が中へ入ることは出来なかった。 父は何故か親族の場所ではなく、兄弟達とは少し離れた所に私と座った。 お葬式は厳かに進んでいき、喪主の挨拶となった。 けれど伯父が参列者の前に立つことはなかった。喪主の挨拶を葬儀会社の人に頼んだからだ。 伯父は本来次男であり、なんちゃって長男だ。 そして常に出来の良かった亡くなった長男にコンプレックスを持っていた。 更に頭にも… 伯父は少し頭髪が薄かった。その事をとても気にしており、昔からヅラを被っていた。 取って付けたようなヅラを… その大事なヅラをお葬式のバタバタで、忘れたのだ。 隣に座る父を見ると、周りの人は正座しているというのにあぐらをかいて、手を合わせるでもなくやはり飄々としていた。 しかもニタニタ笑いながら私に、 「兄貴、アホやな。」 と言った。 確かに、私も子供心にちょっと思った。
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