星に願う

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星空が広がっていた。 私たちを押し潰すような圧倒的な力で。 見上げてくらりと目眩がしたけれど、惰性でそのまま歩いて、草丈の低そうな場所に倒れ込むように二人転がった。 しばらく無言でひっくり返っていたが、隣から穏やかな声がした。 「星になって空にとけてしまいたい」 私は泣きそうになる。繋ぎ止める糸を懸命に探す。 「星もそう思っているかもしれない。あの青い星の小さな生き物になりたいって」 「こんなに……」 声が途切れた。 言え。言え!私は強く念じる。 そして、消えてしまいそうなほど小さく、震えて私の耳に届いた。 「……こんなに辛いのに?」 私はカズホを抱きしめた。地面に転がり露で湿ったまま、ただ夢中で覆い被さるように抱きしめた。 私に抱えられたまま、こらえきれずに呻くようなくぐもった音が漏れる。私とカズホの間を、熱い涙が通っては冷えて髪を濡らしていく。 なにも言葉は出なかった。 しばらくして、カズホが腕の下でモゾモゾと動く。 「はだびず……」 起き上がってリュックからティッシュを渡し、カズホがフーンと鼻をかんでいる間に、レジャーシートとブランケットを広げる。 カズホはそこにコロリと寝転んで、ブランケットで顔半分まで覆った。 「スッキリした……」 鼻だろうか。心だろうか。修行が足りない私にはわからない。 「星が降ってくるみたいだぁ」 トロトロと呟いたカズホが、電池の切れた懐中電灯のように眠りに落ちた。その唐突さに私はギクリとする。 寝息を聞きながら、起きている時には言えなかった言葉を繰り返す。 「大丈夫だよ。大丈夫」 会わぬうちに削げた頬が悲しい。 その頬骨に触れ、なぜ人は星に願うのかを知る。 いつかまたカズホに暗闇が訪れた時、どうかそばに居られるように。それが叶わないなら、カズホに光を。 六等星でも構わないから、光を届けてくれ。 闇が薄くなる。空に青味が混じり、東の端の星が溶けるように消えていくまで、私は細いカズホの手を握り、星に願っていた。 おわり
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