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星を見に行こうと誘ったのは私だった。
大学で知り合った個性的なカズホと地味な私は、不思議と馬が合った。卒業してからは互いの住まいは電車で二時間ほどの距離になったが、年に一度か二度は会っている。
ライブや演劇、歌舞伎に落語。ケーキバイキングにビアガーデン。知らない街をのんびり散策することもあったし、弁当を持ってピクニックをすることもあった。
カズホの我が道を行く様が好きだった。時折、生きにくそうな所も見られたけれど、それでもしなやかに笑って足を前へ前へと動かす。連絡が取れないなと思ったら、海外から一人旅中だと手紙が届くこともあった。
離れていても、ふとした時に心に浮かぶ人だ。
いつものように、ぼちぼち遊ぼうと連絡したのは数カ月前だった。しかし、返事が来ない。気になりつつも、また旅行かなとそのままになり、思い出して再び連絡をしたその返事は、時間が経ってから、「遠くに行きたいな」という言葉で返ってきた。
「もっと遠くが良かった?」
「ううん。星見たかった。なんか、疲れちゃってさ」
声の方を向いても、その続きはない。
足元を照らす灯りのせいで闇に目が慣れることもなく、カズホの表情は見えなかった。
それでも、急に木々がひらけてカズホが息を呑んだのはわかった。
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