星に願う

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真っ暗闇はこわい。 人生初の本当の闇。 目を開けても、閉じても変わらない。 足の裏で地面を踏みしめるが、果たして真っ直ぐに立てているのだろうか。緑の匂いが急に濃く感じられた。 「電池切れ?大丈夫?」 カズホの声で我に返る。 「ん。切れたみたい」 握っていた懐中電灯をポケットに差し込み、かわりに携帯電話のライトを点ける。 暗闇を進むには頼りない灯りだ。足元を照らすだけで先までは届かない。一度戻ろうかと私が言うと、カズホは眩しそうに目を細めながら、行こうと首を振る。 「じゃあ、手を繋ごう」 そんな歳ではないが、やむを得ない。 「大学の時以来?」 「十年ぶり?」 本当は大学生の頃にだって手を繋いだという明らかな記憶はないけれど、照れくさくてどこか懐かしく、軽く合わせる程度に手を重ねる。 「この林を抜ければ星の見える丘なんだよね」 「宿の人はそう言ってたけど……」 とにかく道からそれないように気をつけなければならない。道といっても舗装してあるわけではなく、伸びた草に隠れてしまいそうな土の道だ。闇にざわめく葉音の中をそろそろと進む。
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