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第5章:赤い聖剣『フォルティス』
「馴れ合うつもりはありません。貴方の良くない噂はわたし達侍女の耳にも入っていますから」
シズナを守るようにアティアが進み出て、自分より遙かに背の高い男を睨みつける。
「どちらが中途半端で役立たずかは、旅の中で自ずとわかる事でしょうね」
「口ばかりは達者だな、ベッドを整えるしか能が無いメイドさんはよ」
「馬鹿の一つ覚えみたいに剣を振り回すしか能が無い人よりは、余程ましです」
ばちばちと。アティアとイリオスの間で見えない視線の火花が散っているようだ。間に入るべきか、言葉を失ってしまうシズナに、
「シズナ」
と、二人のやりとりなどどこ吹く風とばかりに、コキトが気軽に声をかけてきた。
「あんたの為に、魔律晶を改良した。あんたは器用だからね、魔律晶を幾つも持たなくても色んな魔法を使えるように、一つにまとめたんだ」
そう言って魔法士は、ちゃらり、と細いチェインをシズナの眼前に垂らしてみせる。その先には、親指の先大の、七色に輝く球状の石がぶら下がっていた。
「魔律晶を磨きに磨いて、出来る限りの能力を封じ込めた『混合律』だ。あんたが今までに使いこなした魔法は大体発動できるように仕込んである」
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