第5章:赤い聖剣『フォルティス』

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第5章:赤い聖剣『フォルティス』

 イリオスはがつがつと肉をむしゃぶり、コキトはぷうんと羽音を立てて飛んできた血吸い虫を、平手で叩き落とす。アティアはイリオスの嫌味に一瞬眉をひそめたが、すぐに真顔で食事に戻り、ミサクは黙々と己の戦果を食している。  翌朝の分を残して肉を食べ、木の実も腹に収めると、すっかり日が暮れて夜空に星々が瞬き始めた。 「火の番を置いて、順番に眠りにつこう。シズナは慣れていないだろうから、一晩ゆっくり眠ってくれ」  ミサクがそう提案したので、何だか足手まとい扱いされている気がして、シズナは頬を膨らませたのだが。 「貴女は一日歩き通しなんて生まれて初めてだろう。疲労はわからないうちに蓄積されて、ある日突然支障となって表れる。そうならないように、最初のうちは休める時にしっかり休んで欲しい」  丸一日ではないにせよ、故郷で山の中をアルダと共に駆け回った経験は、一度や二度ではない。体力には自信がある。
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