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第5章:赤い聖剣『フォルティス』
更に二日をかけてセレスタの村に辿り着いた時、シズナはその異様さに、村の入口で立ち尽くしてしまった。
活気が無い。唯一王国首都に近い集落なのだから、もっと人々が外に出ていて、子供が無邪気に駆け回っているのではないかと思っていたのだが、道に人影は無く、シズナが暮らしていた故郷の村より静まり返っている。
首を傾げながら再び歩き出し、道を歩くと、一人、中年の女性が井戸端で水を汲んでいた。
「あの、すみません」
シズナが声をかけると、女性ははっとこちらを見、それから、一瞬にして表情を凍らせたかと思うと、慌てて水桶を持ち上げ駆け出し、近くの家に飛び込んで乱暴に扉を閉めた。そしてすぐさま、中から厳重に鍵のかかる音がしたのである。
「何だよ、助けにきた勇者様ご一行に、とんだ歓迎だな」
イリオスが唾を吐いて顔をしかめる。
「魔物の襲撃があるから、過敏になっているのかも知れない。とにかく、宿を取って話を聞いてみよう」
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