第5章:赤い聖剣『フォルティス』

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第5章:赤い聖剣『フォルティス』

 ミサクが彼の不機嫌には請け合わず、淡々と行動指針を示したので、「相変わらずのいい子ぶったお坊ちゃんが」とイリオスが舌打ちしたのが、シズナの耳にも届く。が、ミサクは聴こえているのかいないのか、肩にかけた荷物を軽く背負い直して、足早に村で一軒しか無い宿を目指して歩き出した。  主にイリオスのせいで険悪な空気の中、五人は歩き、宿の扉を開ける。一階は食堂になっていて、カウンターの向こうで食器を拭いていた主人は、シズナ達――というよりはミサクとイリオスの騎士服か――を見て、明らかに怯えの色を浮かべた。皿を取り落としかけ、慌てて握り直し、おずおずとミサクに声をかける。 「き、騎士様がた、今日は何のご用でしょうかい……? 娘なら今は疲れて寝ているので、お勤めが出来るのは日が沈んでからで……」 「おっ、ここはねえちゃんがお相手してくれるのか? 気前がいいぐあっ!?」  たちまち機嫌を直して口笛を吹くイリオスの後頭部を、アティアが背伸びして思い切り叩いて黙らせる。それを一瞥して、ミサクが主人に向き直った。 「すまない、話がわからない。どういう事だ」
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