第5章:赤い聖剣『フォルティス』

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第5章:赤い聖剣『フォルティス』

 そう切り出した主人の話によると、魔物退治に来たはずの騎士達は、初めこそ魔物と戦ってくれていたし、村人達も酒や食事を出して感謝の意を示した。だが、一週間を過ぎ、月が新月から満月を過ぎても、彼らの魔物討伐が完了する気配は見えない。それどころか、村人が貢ぐのが当然のごとく振る舞って、毎日食堂で金を払わない暴飲暴食を繰り返したり、金目の物を巻き上げたり、女性の奉仕を要求したり、遂には、孫娘を差し出す事を拒んだ老人を、魔物を倒すはずの刃で斬り捨てたという。  村は横暴に屈するしか無く、いつどんな無茶を言われるか、どんな無体を働かれるか、魔物以上の脅威として、戦々恐々としながら暮らしている状態だという。 「なんて奴ら」  シズナの悪態は、思わず口をついて出てしまった。王都にいた頃から、王家に関わる人間にろくでもない連中が混じり込んでいるのは、嫌というほど思い知っていた。だが、あの場所を離れてからも、唯一王国の腐敗した片鱗を見せつけられるのか。苛立ちが募る。  唇を噛み締めてぐっと拳を握り込むと、隣でミサクが再び口を開いた。
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