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第5章:赤い聖剣『フォルティス』
「彼らはどこにいる。僕の立場なら、場合によっては彼らを強制送還させる事も可能だ」
「へ、へえ、騎士様が?」
傍から見れば少年に過ぎない彼が、分隊長を処罰する権限を持っているなど、一般の村人には想像がつかないだろう。実際、一年付き合ってきたが、シズナもミサクの立場については、「剣も魔法も使えないのに、年上のイリオスよりは偉いのかも知れない」というぼんやりとした認識を持っているだけだ。
だが、周りのそんな疑念もお見通しとばかりに、ミサクは懐から、掌大の銀製の、何か平たい物を取り出した。「出たよ、お坊ちゃんの切り札」とイリオスが忌々しげに頬を引きつらせる。
そこには、凛々しく翼を広げる伝説の幻鳥ガルーダが刻まれていた。幻鳥は、唯一王国を守護する聖獣であると言われている事は、シズナも座学で習った。
「アナスタシア特務騎士隊長、ミサクだ。騎士団における不逞の輩は、特務騎士隊が罰する」
紋章を眼前に掲げて、少年騎士は少しも動じずに言い切る。シズナは驚きに目を丸くして、自分はこの話には関係無いとばかりにきょろきょろ周囲を見回していたコキトに耳打ちする。
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