16人が本棚に入れています
本棚に追加
第5章:赤い聖剣『フォルティス』
「特務騎士って、そんなに偉いの?」
「偉いっていうか、文字通り特別さね」
すげなく流されるかと思ったが、コキトは少しだけこちらに顔を近づけて、小声で説明を返してくれた。
「主に一芸に突出した奴を集めて、要人の警護から、あんたみたいな事情持ちの面倒見、表だって出来ない物や人間の捜索、果ては暗殺じみた黒い仕事まで請け負う、便利屋みたいなもんだ」
便利屋、などとコキトは呑気に言い放ったが、暗殺までするとは穏やかではない。ミサクがそんな部隊の人間、しかも隊長であった事に、シズナが唖然としていると、がやがやと外が騒がしくなり、派手な音を立てて宿の扉が開かれた。
「おら親父! 騎士様が見回りからお帰りだ!」
「酒出せ酒! 肉もだ!」
「てめえの娘にしては器量よしのあの女に酌をさせろや!」
汚い口調で偉ぶる連中が、七人。どいつもこいつもミサクやイリオスと同じく、アナスタシアの騎士服を着ている。こいつらが、主人の話にあった騎士達に間違い無いだろう。
しかし彼らは、今日は宿に先客がいた事に気づいて歩を止め訝しみ、それから、シズナ達の顔ぶれを見て、一人が「おい」とこちらを指差してきた。
最初のコメントを投稿しよう!