第5章:赤い聖剣『フォルティス』

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第5章:赤い聖剣『フォルティス』

 村人の一人だろう若い男性は、食堂に入ってきた途端、繰り広げられている光景に一瞬目を見開いて固まったが、すぐに気を取り直し、騎士達に向かって声を張り上げる。 「あんた達の出番だろう!? 言い値を払うから、早く何とかしてくれ!」  成程、退治の度に金をせびってもいたのか。シズナの中ではもう、怒りを通り越して呆れしか出ないが、とにかく今は、目の前の連中とくだらない喧嘩を繰り広げるより、この村の危機を取り除く方が先だ、と判断する。 「貴方達」  シズナが碧の瞳を細めてすごむと、普通の小娘が持ちえないはずの威圧感を発した事に、騎士達は気圧されたようだ。びくりと肩をすくめる。 「この場は一旦預けるわ。魔物をやっつける方が先よ」  その言葉に、彼らは一様に振り子人形のごとく首をかくかく縦に振ると、宿から飛び出した。シズナ達も後に続いて外へ向かう。  そこで繰り広げられていた光景に、シズナは瞬間、息を呑み、意志に関係無く足を止めてしまった。
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