第5章:赤い聖剣『フォルティス』

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第5章:赤い聖剣『フォルティス』

 たちまち『混合律』が水色の光を放ち、竪琴の弦を弾くような音と共に左腕を伝ってゆく。掲げたその手の先から、多くの氷の矢が生み出され、シズナが腕を振り下ろすと同時、矢は魔物達に降り注いだ。無数の矢に貫かれては、魔物もたまらない。次々と断末魔の悲鳴をあげて倒れ、地面に血の花を咲かせた。  やっと周囲に目を向ける余裕が出てきて、仲間達を見回す。ミサクは動じる事無く正確無比な射撃で魔物の頭部を撃ち抜き、イリオスは「ハッハー!」と笑いさえ爆発させながら、膂力に任せて敵の首を次々斬り飛ばしてゆく。アティアは短剣で魔物を牽制し、怯んだ所に、コキトが『聖光律』で生み出した白い光の槍が貫いた。  騎士達も、いざ戦いになれば、自分の命がかかっている。必死の形相で魔物達と戦っていた。  だが、狼の魔物がほぼ撃退され、人間達が優勢のまま終わると思われていた戦いに、変化が訪れる。 「た、助けてくれえええ!」  村人達の悲鳴が近づいてくる。はっとそちらを見やれば、新手の魔物が視界に入った。
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