第1章:血染めの祝福

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第1章:血染めの祝福

 ほんのりとした甘さを帯びるパンを食べると、ルイボス茶を口に含んで飲み下す。母の愛情が詰まった食事に、腹の底から満足感が湧き上がって、シズナがにこにこしていると。 「シズナ」  唐突に父に名を呼ばれ、相手に見えていないとわかっていながらも、少女は小首を傾げた。 「こないだ、お前とイーリエが畑に出ている時に、アルダと話をした」  少年の名前が出てきた事と、父の声色が真剣味を帯びていたので、これは重要な話であると判断して、シズナは姿勢を正す。父の傍らの母も、夫の口から出てくる話の内容を知っているのか、唇を引き結んでいた。 「アルダは十八だ。お前も十六。新たな家庭を持つのに不足のある歳ではない」  どきり、と心臓が大きく脈打つ。シズナの予感を確かなものにするかのように、父は言を継いだ。 「アルダに言われた。お前を嫁に欲しいと。私達に本当の父母になって欲しいと。私は見えていないが、恐らく頭も下げていただろう」
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