第5章:赤い聖剣『フォルティス』

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第5章:赤い聖剣『フォルティス』

 シズナの背丈の四倍はある巨大な植物。ぱっと見はそう思えた。だが、植物にしては蔦のような触手がうねうねと動き回っているし、根と思われる部分は足のように器用に地面を這い、花と思しき場所にはぱっくりと大きな口が開いて、ぞろりと揃った牙が獲物を待ち構えているごとくに見えた。  その巨大植物の魔物が、逃げ遅れた村人を触手のような蔦でつるし上げ、ゆっくりと口元へ運んでゆく。 「うっ、うわああああ!!」  恐怖に駆られた悲鳴の一瞬後、反射で目をつむってしまったシズナの耳に、肉が裂かれ骨が砕かれる嫌な音が届く。のろのろと目を開けば、魔物の口から赤い液体がたらたらと滴っていた。 「ひっ、ひい……」  騎士団の連中がたちまち恐れをなし、後ずさる。 「何をしてるんですか! 魔物から村人を守るのが貴方達の仕事でしょうに!」  しびれを切らせたアティアが一喝しても、彼らの恐慌が去る事は無い。 「だ、だってよお、あんな魔物と戦った事なんかねえよ!」 「初めて見る奴だ、かないっこねえ!」 「ま、魔王の嫁が来たから、つられて来たんじゃねえのかよ!」
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