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第5章:赤い聖剣『フォルティス』
彼らは及び腰のまま、しかしシズナを指差して言いたい放題である。どこへ行ってもこの扱いなのだろうか。
だらだらと。血と涎の混じった液体を垂らしながら、魔物がこちらに向き直る。その鈍重そうな図体とは裏腹な俊敏な動きで、地を滑るようにこちらに向かってきたかと思うと、触手を何本も伸ばしてきた。
シズナとイリオスはそれを剣で打ち払い、コキトが『火炎律』を使って轟音と共に焼くが、魔物は一瞬怯んでみせたものの、見る間に触手が再生してまたも襲いかかってくる。その幾本かが、シズナ達の迎撃をくぐり抜けて、背後で震えあがっていた騎士達の二人を絡め取った。
「うっ、うっ、うへあああ!」
とてつもなく情けない悲鳴と共に、一人が触手に足を取られて宙釣りになる。一人はぐるぐる巻きにされてずるずると魔物のもとに引き寄せられていった。
「ひ、ひいい……!」
たちまち他の騎士達が腰を抜かし、這いつくばるように後ずさる。しかし、恐怖に駆られて尚、シズナ達をどやす事だけは忘れていないようだ。
「な、何とかしろよ、お前ら!」
「そうだ、勇者様ご一行なんだろ!? さっさと魔物を倒せよ!」
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