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第5章:赤い聖剣『フォルティス』
「それとも魔王の嫁だから、魔物の味方だってか!?」
「なんて言い草」アティアが呆れ果て、
「自分達の本来の任務を放棄、か。報告書に書く事項が増えたな」
ミサクが弾込めをしながらしれっと言い放つ。
どこへ行っても、どこまで行っても、『魔王の嫁』。自分はこんな連中の為に戦わねばならないのか。シズナの中で燃え上がる感情、これは明確な怒りだ。
ならば、いっそ。
シズナは聖剣を握り直す。どこへ行っても『勇者の娘』ではなく『魔王の嫁』と悪意を持って呼ばれるならば、その名前の脅威を借りて戦えば良いのではないか。
念じた途端、『フォルティス』がかっと熱を帯びた。手元を見下ろせば、柄にはまった石が赤に輝き、刀身へと光が流れてゆく。
そうして。
聖剣『フォルティス』の刃が、聖なる青ではなく、禍々しい血の色に染まった。
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