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第5章:赤い聖剣『フォルティス』
ミサクも、イリオスも、コキトも、アティアも。唖然としてシズナを――正確にはその手にした『フォルティス』を――見つめていた。聖剣が魔剣『オディウム』と同じ色に光るなど、今までの勇者の伝承に無かった、ゆゆしき事態だ。
だが、シズナは仲間達の視線さえ気にせず、赤い聖剣『フォルティス』を手に、魔物に向けて走り出した。
魔物が吼え、触手がシズナに絡みつこうと迫ってくるが、聖剣が力を与えたのか、考えるより先に身体が動き、容赦無く触手を切り落としてゆく。そして魔物の足を取っ掛かりにして、『混合律』から『跳躍律』を引き出し、ぱあんと空気を叩く音と共に、人間の跳躍力を超えた力で敵の頭上を取ると、大上段から聖剣を振り下ろす。
その眼前に、迫りくる死に目を見開いて言葉にならない叫びをあげる騎士が迫り。
そうして、赤の刃は捕らえられた騎士ごと、魔物を一刀両断した。
魔物は一瞬にして、本物の植物のごとく茶色に枯れ、その場に崩れ落ちる。驚愕の表情のまま真っ二つになった騎士からばあっと血が噴き出し、シズナの身を赤く染める。足を取られて宙吊りになっていた騎士が投げ出される。高々と吊り上げられていて、頭から硬い地面に落ちてぶつかった衝撃で、ごきりと首の骨が折れる音がして、彼は白目をむいて泡を噴き、それきり動かなくなった。
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