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第5章:赤い聖剣『フォルティス』
シズナはそれらを冷ややかな目で見つめながら地に降り立ち、『フォルティス』を鞘に収める。聖剣の柄にはまった石はたちまち透明に戻り、あれだけ感じた熱も、一瞬にして収束した。
「……化け物」
震え声が聴こえたので、そちらを向く。騎士達が震えあがってシズナを指差していた。
「人間を怪物ごと殺しちまうなんて。しかも聖剣をあんな色にするなんて」
「やっぱり魔王の嫁だ。化け物だ」
「人殺しめ、悪魔だ!」
ろくに戦わなかったくせに、口だけは達者だ。シズナの胸は熱に滾っていたが、頭の奥はひどく冷静だった。彼らこそ罪の無い村人達を苦しめ、命さえ奪った悪魔ではないか。しかし、そう言い返そうとした彼女を、横から腕を伸ばして制したのは、ミサクだった。
「新手の魔物から村を守る事をおろそかにしただけでなく、唯一王国の勇者を貶める発言をした。これらの件は手抜かり無く罪状に加えさせてもらおう」
「特務騎士隊長様の意見は、宰相より上の権威を持つからなあ。どんなお仕置きを受けるか、見届けられねえのが残念だぜ」
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