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第5章:赤い聖剣『フォルティス』
今回ばかりはイリオスも加担して、腕組みしながら宙を仰いで豪快に笑う。たちまち騎士達が今更ながら己の失態に気づき、「そ、そんな!」と青ざめたが、ミサクは青い目を冷淡に細めて、「それに」と続けた。
「君達が今までこの村でしてきた事は、村人達が証人になってくれる。騎士の位剥奪以上の罰も覚悟しておくんだな」
彼らの仲間の命を奪ったものの、流石に騎士達が憐れになってきて、シズナは「そこまでする必要がある?」とミサクに声をかけたのだが、彼は、自分は一切間違っていない、という自信に満ちた顔をこちらに向けると、
「僕は貴女の不利になる事は一切しない。貴女に害をもたらす者は、誰であろうと排除する。必ずだ」
と、寸分の躊躇いも無く言い切ってみせた。
何故、知り合ってまだ一年の女の為に、彼がそこまでしてくれるのか。
そして何故、青い輝きを放つはずの聖剣が赤に染まったのか。
疑問の種は心の中で芽を出したが、答えを返してくれる者は、今、魔物の襲撃が沈静化し、破壊の火も消えようとしているこの場には、一人としていなかった。
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