第1章:血染めの祝福

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第1章:血染めの祝福

 アルダが父に乞うた。自分と共に生きる道を望んでくれた。その事実が強く胸を打ち、喜びの大波となってシズナの中に溢れる。彼は本気で、シズナを生涯の伴侶として選んでくれたのだ。それを思うと、目の奥から溢れてくるものがある。  父がゆるりと微笑み、母が、「良かったね、シズナ」と言いながら、女としてはごつごつした手を伸ばして、くしゃりと頭を撫でてくれる。それが呼び水となって、シズナの涙腺はとうとう決壊した。  両親も祝福してくれるなら、自分は迷わずアルダを選ぼう。ユホは嫌な顔をするかもしれないが、これからは本当の家族になるのだ。アルダの為に、歩み寄る努力もしよう。 「あり、がとう」濡れた頬を手で拭いながら、シズナは両親に向けて低頭する。「ありがとう、父さん、母さん」 「ああもうまったく、いい娘が」  母が席を立ち、逞しい腕の中にシズナを収めて、あやすように揺らす。 「家庭を持つって事はね、一人前の大人になるって事。もう子供みたいに泣くんじゃあないよ」  優しく降ってくる言葉に、シズナの目から更なる涙が零れ、しゃくりあげながらも少女はしっかりと頷いた。
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