第6章:夢惑の森に銃声は響かない

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第6章:夢惑の森に銃声は響かない

 どれくらい戦っただろうか。わらわらと自分に向かってくる小鬼を全てねじ伏せた時、シズナは周囲があまりにも静まり返っている事にやっと気がついた。辺りを見回せば、霧の深い森と、累々と横たわる魔物の死体ばかりで、ミサクもアティアもイリオスも、姿が見えない。どうやら完全にはぐれてしまったようだ。  溜息をつきながら剣を鞘に戻し、懐から方位磁石を取り出す。せめて方角を把握できればと思ったが、磁石は案の定狂ったようにぐるぐる回るばかりで、正確な情報を与えてはくれなかった。 『山で遭難した時は、無闇に歩き回らない事だ。体力を消耗してあっという間に弱る』  師匠のガンツの言葉が脳裏に蘇る。 『水場を確保して、食料は一気にじゃあなく少しずつ口にする事。救助を期待出来るなら、動かないのが上策だ』
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