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第6章:夢惑の森に銃声は響かない
ここは山ではなく森だが、今陥っている状況は似たようなものだろう。道を知っているミサクが、皆を集めて助けにきてくれるかも知れない。この場にとどまるべきか。
だが、という思いも浮かぶ。
万が一、ミサクが敵と通じているとしたら。わざと危険な森にシズナ達を引き込んで、ばらばらに引き離して、一人ずつ始末しようとしているとしたら。
そこまで考えた所で、馬鹿な話だと頭を振ってその考えを脳内から駆逐する。ミサクはこの一年間、親身になってシズナの面倒を見てくれた。シズナもミサクには信用を置いていたから、こちらの油断を衝いて始末する事など、容易かっただろう。
いや、王城内でそれをすれば、ミサクは勇者を殺した大罪人として刑に処せられる。王都を離れた今だからこそ、死体さえ残さなければ、「勇者シズナは奮戦虚しく命を落とした」などという建前をいくらでも作って、ヘルトムート王に報告出来る。
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