第1章:血染めの祝福

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第1章:血染めの祝福

 青白い満月の光が、カーテン越しにも薄く差し込んでくる。まんじりとしない秋の夜長に、シズナは自室のベッドの上で、何度目かわからない寝返りを打った。  寝つきは良い方だった。しかし、夕飯の席での両親とのやり取りを思い返せば、勝手に心拍数が上がって、目はしっかりと冴えてくる。  アルダのお嫁さんになるのは、幼い頃からの夢だった。いや、最早当然の流れとしてそうなるものだと信じていた。だがそれが現実味を帯びると、こんなにも胸躍るものだったのか。  母から料理を習っていて良かった。父の銀細工も傍で見ていたから、父ほど本格的ではないにせよ、村人達を楽しませる程度の物は作る事が出来るようになるだろう。そう考えた所で、いや、と思いを転換させる。  アルダは外界に住もうと、事あるごとに言っていた。その夢を果たすには、村を出てゆかねばならない。両親やユホを置いてゆくのだろうか。それとも共に降りてゆくのだろうか。  だが、彼らは自分達子供らが知らない、外界で暮らせない理由を抱えてこの村へ来たのだ。一度離れた場所へ戻る事をよしとしてくれるだろうか。
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