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第6章:夢惑の森に銃声は響かない
聞けば答えになっていそうなその言葉には、肝心な部分が欠落していた。彼がそこまでする理由がわからない。
しかし、それ以上を問い詰める事はかなわなかった。
「行こう」
ミサクがこちらに向けて手を差し伸べたからだ。
「リリスを殺してしまった以上、この森の魔力は解けるだろう。霧も晴れて、アティア達とも合流できるはずだ」
正直今は、この手を取るのが恐い。握った瞬間に、彼は反対の手で、イリオスと同じようにシズナの眉間を撃ち抜くのではないかと思えるのだ。
だが、貴女の為だと力を込めて言い放った彼の言葉も嘘とは思えない。
戸惑いながら、シズナはミサクの手を借りて立ち上がった。
「あっ、シズナ様、ミサク様!」
イリオスの死体を二人がかりで泉に沈め、森を北に抜けた所で、アティアの明るい声がシズナ達を出迎えた。
「良かった、ご無事で。コキト様も見つかったんですよ」
嬉しそうに両手を打ち合わせる彼女は、シズナの格好と、いつも以上に平静を保とうとしているミサクの表情を見て、察したようだ。
「……イリオス様は」
「魔物に襲われて死んだので、弔ってきた。これからは四人だ」
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