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第1章:血染めの祝福
ぐるぐると考えは巡り、一向に答えを弾き出してはくれない。明日アルダに会った時、きちんと話をしなくてはならないだろう。嘆息して、もう一度寝返りを打った時。
かつん、と。
窓に何かが軽く当たった音を聴いて、シズナは身を起こし、ベッドから降りた。裸足のまま窓際へ近寄り、カーテンを軽く引く。そして目を見開いた。
月光に照らされる紫の髪。薄い唇が笑みを浮かべて『シズナ』と呼んでいる。
「アルダ!?」
驚きの声をあげつつ窓を開け放つと、少年は片目を瞑り口の前に人差し指を立てながら、窓枠を乗り越えて室内に入ってきた。
一刻も早く会いたいと思っていた相手が、こんな夜中にやってきた事に戸惑いを隠せず、シズナが目を白黒させていると、アルダは静かに窓を閉め、「ごめん」と言いながらもその腕で少女を強く抱き締めた。
「エルシがうちに来てくれたよ。本当は、俺の口からきちんと君に言おうと思っていたんだけど」
耳元で囁く声に、心臓は速度を高めてゆく。
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