第7章:きっと誰もが嘘を吐く

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第7章:きっと誰もが嘘を吐く

 名も無き北の山奥は、雪こそ降ってはいなかったが、びょうびょうと冷たい風が身を叩き、かじかむ手に何度も息を吹きかける羽目になる。 「いやんなっちゃうな」  ぼやいたコキトが『温暖律』で周囲の空気の温度を上げる事で、ようやくシズナ達は、いくばくかの安心感を得る事が出来た。  ここに来るまでに、何度か魔物の襲撃に出くわした。豹のような俊敏な獣、人間より一回り大きい食人鬼(オーガ)、八本の足で地面を這い回る大蜘蛛、翼の生えた鳥人間(ハルピュイア)。かつて目にしたもの、王都での座学で習ったもの、知らずに初めて出くわすもの、多々あった。  イリオスを失って四人になったシズナ達は、しかし人数が減ったからこそか、より連携を見せるようになった。アティアの『勇猛律』で膂力と敏捷性を高めたシズナが、聖剣『フォルティス』を握り先陣を切って敵を斬り払い、彼女を背後から狙う輩はミサクが冷静に銃で急所を貫く。二人の手を逃れた魔物も、コキトの『猛炎律』の業火や『地槍律』による地面隆起からの槍に貫かれて命を狩られる羽目になった。 「やっほう、豊作豊作!」
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