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第7章:きっと誰もが嘘を吐く
戦いが終われば、コキトがうきうきしながら倒れた魔物の腹をさばいて、魔律晶を取り出す。それをもって魔物を動かすという、命の源、魔法の核である魔律晶は、様々な色や形を見せて、コキトの手中に収まる。これは使える、これは力が足りない、と魔法士が吟味して仕分けしている間に、
「シズナ様、お疲れでしょう。お茶を淹れますね」
と、アティアが近くの川から水を汲んできて、火を熾して沸かし、カモミールとエルダーフラワーで、戦いに昂った心の安らぐ茶を淹れてくれた。
だが、シズナの中の疑惑は晴れない。
もしも、この中の誰かが、偶然を装ってシズナの勇者としての活動を阻害しているとしたら、魔王城には永遠に辿り着けないだろう。魔王を倒せない勇者に、唯一王国は用は無い。ただでさえヘルトムート王の機嫌を損ねているのだ。シズナから『フォルティス』を取り上げて他の誰かに渡し、シズナの事は適当な理由をつけて処分しかねない。一年前まで世間を知らずにいた彼女でも、その程度の想像は巡らせる事が可能になっていた。
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