第7章:きっと誰もが嘘を吐く

1/1
前へ
/238ページ
次へ

第7章:きっと誰もが嘘を吐く

 そうして、偽りの勇者は誕生した。  王都に凱旋した『勇者』エルストリオ一行は、民の熱烈な出迎えを受け、ヘルトムート王に魔王討伐の報告をした。唯一王は勇者が魔王を打倒した成果を褒め称え、エルヴェリウスの不幸を嘆き、エルストリオの勇猛に敬意を示した。  だが、それは表向きの伝説である。そこから先は、仕組まれた勇者の辿る道であった。  勇者凱旋の宴が催されたその晩、王宮に暗殺者が忍び込み、勇者の仲間であった神官と弓騎士の命を狩り、応戦したエルストリオの目を切り裂き逃走した。別室で眠っていたエルヴェとイーリエに被害は無く、下手人は捕まらなかった。  エルシに傷を与えた刃には毒が仕込まれていたらしく、彼は三日三晩高熱を出して生死の境を彷徨ったが、王宮の魔法士達の尽力により、視力を失ったものの、一命をとりとめた。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加