16人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ
第1章:血染めの祝福
「シズナに話を伝えてくれたって聞いた。ユホの事は心配するな、とも言ってくれた。それを聞いたら、居ても立ってもいられなくって。早く俺の想いをシズナに伝えたくてしょうがなくなった」
唖然と半開きになる少女の唇に、少年の唇が触れる。
「シズナ」
甘い吐息が至近距離で吹きかけられた。
「君が好きだ。ずっとずっと好きだった。俺のお嫁さんは、シズナ以外考えられない」
知っている。知っていた。何度も遠回しに聞き、口づけも交わしたが、直球の告白を受けるのは、恐らくこれが初めてだ。
「シズナは?」紫の瞳がまっすぐにこちらの目をのぞき込んでくる。「俺の事をどう思ってる?」
返事は、すぐに出なかった。返す言葉はただひとつなのに。決まりきっているのに。いざその時を迎えると、喉の奥で詰まって、放たれるのに酷く時間がかかる。震える唇を叱咤して、「私も」シズナはその言葉を紡ぎ出した。
「好き。アルダが大好き。ずっとアルダのお嫁さんになりたいと思ってた」
少年が満足げに微笑み、「じゃあ」と再び口づけを落とす。
「今すぐ君をお嫁さんにしたい」
心臓が一際大きく跳ねた。その言葉の意味がわからないほど、シズナも幼稚ではない。あまりにも唐突で、心拍の音が耳の奥で響いているのが自覚出来る。
だが、躊躇いは無かった。
「いいよ」
両腕を伸ばし、少年の首にすがりつく。
「アルダのお嫁さんにして」
それ以上の言葉は必要なく、月光に照らされる影が重なり合う。白いシーツの上に少女の金髪が広がり、少年が、三度目の口づけを少女の唇に降らせた。
最初のコメントを投稿しよう!