第1章:血染めの祝福

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第1章:血染めの祝福

「シズナに話を伝えてくれたって聞いた。ユホの事は心配するな、とも言ってくれた。それを聞いたら、居ても立ってもいられなくって。早く俺の想いをシズナに伝えたくてしょうがなくなった」  唖然と半開きになる少女の唇に、少年の唇が触れる。 「シズナ」  甘い吐息が至近距離で吹きかけられた。 「君が好きだ。ずっとずっと好きだった。俺のお嫁さんは、シズナ以外考えられない」  知っている。知っていた。何度も遠回しに聞き、口づけも交わしたが、直球の告白を受けるのは、恐らくこれが初めてだ。 「シズナは?」紫の瞳がまっすぐにこちらの目をのぞき込んでくる。「俺の事をどう思ってる?」  返事は、すぐに出なかった。返す言葉はただひとつなのに。決まりきっているのに。いざその時を迎えると、喉の奥で詰まって、放たれるのに酷く時間がかかる。震える唇を叱咤して、「私も」シズナはその言葉を紡ぎ出した。 「好き。アルダが大好き。ずっとアルダのお嫁さんになりたいと思ってた」  少年が満足げに微笑み、「じゃあ」と再び口づけを落とす。 「今すぐ君をお嫁さんにしたい」  心臓が一際大きく跳ねた。その言葉の意味がわからないほど、シズナも幼稚ではない。あまりにも唐突で、心拍の音が耳の奥で響いているのが自覚出来る。  だが、躊躇いは無かった。 「いいよ」  両腕を伸ばし、少年の首にすがりつく。 「アルダのお嫁さんにして」  それ以上の言葉は必要なく、月光に照らされる影が重なり合う。白いシーツの上に少女の金髪が広がり、少年が、三度目の口づけを少女の唇に降らせた。
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